世界一周クルーズの医療事情は?船内で「できる治療・できない治療」

世界一周クルーズに憧れる一方で、多くのシニア層が抱える不安があります。それは「100日間も船に乗って、もし病気になったらどうしよう?」という医療への不安です。持病を抱えている方なら、なおさら心配でしょう。「船の医者は信用できるのか?」「薬が切れたらどうするのか?」「急病で倒れたら、どこに搬送されるのか?」——これらは、決して杞憂ではありません。

結論から言えば、船内の医療設備は思っているより充実していますが、「できない治療」も多く、準備不足だと命に関わるリスクがあります。

この記事のポイント
・船の医務室は「病院」ではない。歯科治療は一切できない
・持病の薬は「日数分+2週間」が鉄則。現地調達は不可能
・船上の医療費は自由診療で超高額。風邪でも10万円かかる
・年会費無料のエポスカードが、最強の医療パスポートになる

船の医務室は「病院」ではない?知っておくべき限界

  • 盲点!「歯医者」は船にいない。出発前の歯科検診が命
  • 持病の薬は「日数分+2週間」が鉄則。透析は対応船のみ
  • 船内で対応できる治療、できない治療の境界線

盲点!「歯医者」は船にいない。出発前の歯科検診が命

まず、最も見落としがちなリスクからお伝えします。それは「船内に歯科医がいない」という事実です。

ほぼ全てのクルーズ船には、内科医と看護師は常駐していますが、歯科医はいません。つまり、虫歯が痛んでも、次の寄港地まで我慢するしかないのです。

100日間の世界一周クルーズ中に歯が痛くなったらどうなるか、想像してみてください。

  • 軽度の虫歯:痛み止めを飲んで我慢。寄港地で歯医者を探す(言葉の壁あり)
  • 重度の虫歯(神経まで達している):激痛で眠れない。緊急下船を検討
  • 歯が折れた・抜けた:応急処置すらできない。寄港地で治療(高額)

特に恐ろしいのが、「親知らずの炎症」です。親知らずが腫れて顎全体が痛くなると、食事も会話もできなくなります。船の医師は抗生物質と痛み止めを処方できますが、根本的な治療(抜歯)はできません。結果、次の寄港地で緊急下船し、現地の歯科医院で抜歯することになります。

歯のトラブル 船内での対応 リスク
虫歯の痛み 痛み止めのみ 寄港地まで我慢
親知らずの腫れ 抗生物質のみ 悪化すると緊急下船
歯が折れた 応急処置不可 寄港地で治療(高額・言葉の壁)
歯茎の出血 止血剤のみ 歯周病の場合、治療不可

世界一周クルーズに参加する前に、必ず歯科検診を受け、虫歯や親知らずの問題を全て解決しておくことが、最も重要な準備の一つです。

特に、以下のような方は要注意です。

  • 親知らずが斜めに生えている(今は痛くないが、将来炎症を起こす可能性がある)
  • 治療途中の歯がある(仮の詰め物が取れるリスク)
  • 歯周病で歯茎が腫れやすい
  • 入れ歯や差し歯が不安定

出発の3ヶ月前には歯科検診を受け、問題があれば全て治療を完了させましょう。100日間の旅費に数百万円かけるなら、数万円の歯科治療費は「保険」だと考えるべきです。

持病の薬は「日数分+2週間」が鉄則。透析は対応船のみ

次に重要なのが「持病の薬」の準備です。高血圧、糖尿病、心臓病など、定期的に薬を服用している方は、100日分の薬を持参する必要があります。

「現地で調達すればいい」という考えは、非常に危険です。海外では、同じ成分の薬が手に入らない、あるいは処方箋が必要で入手困難なケースが多いからです。

持病の薬を持参する際のルールは以下の通りです。

  • 日数分+2週間分:予定よりも長引く可能性(天候不良で寄港地変更など)を考慮し、余裕を持って準備
  • 英文の診断書・処方箋:税関で「これは何の薬か?」と聞かれた時に説明できるよう、医師に英文で書いてもらう
  • 元の容器のまま:薬を小分けにせず、薬局でもらった容器(薬品名が記載されている)のまま持参
  • 機内持ち込み:スーツケースに入れると紛失リスクがあるため、手荷物として機内に持ち込む
持病 必要な準備 リスク
高血圧 降圧剤を115日分(100日+余裕15日) 薬切れで血圧上昇→脳卒中リスク
糖尿病 インスリンまたは血糖降下薬115日分 薬切れで血糖値急上昇→昏睡リスク
心臓病 抗凝固薬など115日分 薬切れで心筋梗塞リスク
喘息 吸入薬の予備も含めて準備 発作時に薬がないと呼吸困難

また、人工透析が必要な方は、船選びが非常に重要です。全てのクルーズ船に透析設備があるわけではありません。透析対応可能な船は限られており、事前に旅行会社に確認が必須です。

JTBのようなクルーズ専門の旅行会社なら、「透析設備がある船」や「日本語が話せる医師が乗船している船」など、医療面での条件を細かく確認してくれます。持病がある方は、格安のオンライン予約サイトではなく、必ず対面相談できる旅行会社を利用しましょう。

船内で対応できる治療、できない治療の境界線

船内の医務室は、「応急処置センター」だと考えてください。病院のように高度な医療設備はありませんが、一般的な内科診療と緊急対応は可能です。

船内医務室で対応できる治療:

  • 風邪、発熱、下痢などの一般的な内科疾患
  • 軽度の外傷(切り傷、打撲など)の処置
  • 点滴治療(脱水症状など)
  • 心電図検査、血液検査(基本的な項目のみ)
  • 骨折の応急処置(ギプス固定など)

船内医務室で対応できない治療:

  • 歯科治療(虫歯、抜歯、歯の痛みなど)
  • 手術が必要な外傷や疾患
  • 重症の心筋梗塞や脳卒中(ICUレベルの治療が必要)
  • MRI、CTスキャンなどの高度な画像診断
  • 出産(妊婦の乗船は制限されています)

重症の場合は、船から最寄りの港へ緊急搬送されます。ヘリコプターでの搬送費用は、数百万円に達することもあります。

風邪ひとつで10万円?「海外旅行保険」がないと破産する理由

  • 船上の医療費はすべて「自由診療」。国民健康保険は使えない
  • 年会費無料の「エポスカード」が最強の医療パスポートになる
  • まとめ:医療の不安を消すのは「事前の検診」と「手厚い保険」

船上の医療費はすべて「自由診療」。国民健康保険は使えない

船内の医務室で治療を受けると、驚くほど高額な請求が来ます。なぜなら、船上の医療は全て「自由診療(保険適用外)」であり、しかも「海上」という特殊な環境のため、料金が非常に高く設定されているからです。

日本の国民健康保険や社会保険は、船上の医療費には一切使えません。全額自己負担が原則です。

治療内容 船上の医療費(目安) 日本の病院(保険適用後)
風邪の診察+薬 3〜5万円 2,000〜3,000円
点滴治療(脱水症状) 5〜10万円 5,000〜10,000円
骨折の処置(ギプス) 10〜20万円 2〜3万円
心電図検査 3〜5万円 3,000〜5,000円
ヘリコプター搬送 200〜500万円

さらに恐ろしいのが「緊急下船」と「ヘリコプター搬送」です。洋上で重症の病気が発生した場合、最寄りの港まで数百キロ離れていることもあります。この場合、陸上から医療用ヘリコプターが派遣されますが、その費用は300〜500万円に達します。

海外旅行保険に入っていない場合、これらの費用は全て自己負担となり、文字通り「破産」するリスクがあります。

また、船内での支払いは基本的にクレジットカード決済です。高額な医療費を請求された場合、カードの限度額を超えてしまうこともあります。事前にカード会社に連絡して、一時的に限度額を引き上げておくことも検討しましょう。

治療費は高額ですが、クレカ保険でカバーできます。詳細は以下の記事を確認してください。
海外旅行保険の代用テクニック ▶

年会費無料の「エポスカード」が最強の医療パスポートになる

ここまで読んで、「海外旅行保険に入らなきゃ」と焦った方も多いでしょう。しかし、100日間の長期旅行保険は、夫婦で50〜70万円と非常に高額です。この費用を節約しつつ、十分な補償を得る方法があります。

それが、年会費無料のクレジットカード(エポスカード)に付帯している海外旅行保険を活用する方法です。

エポスカードは、年会費が永年無料でありながら、以下の充実した海外旅行保険が付帯されています。

  • 傷害治療費用:最高300万円(2023年10月以降、利用付帯条件を満たした場合)
  • 疾病治療費用:最高270万円
  • 賠償責任:最高3,000万円
  • 救援者費用:最高100万円
  • 携行品損害:最高20万円(免責3,000円)
保険の種類 費用(夫婦2名、100日間) 疾病治療費用
掛け捨て海外旅行保険 50〜70万円 無制限または1,000万円
エポスカード(×2枚) 0円 270万円×2=540万円(合算可能)
節約できる金額 50〜70万円

夫婦それぞれがエポスカードを持てば、疾病治療費用は合算されて540万円の補償になります。これは、一般的な掛け捨て保険の「基本プラン」と同等レベルです。

しかも、エポスカードは「キャッシュレス診療」に対応している医療機関も多く、現地で現金を立て替える必要がない場合もあります(ただし、船内医務室がキャッシュレス診療に対応しているかは事前確認が必要)。

エポスカードの保険は「利用付帯」のため、旅行代金の一部(航空券やツアー代金、交通費など)をエポスカードで支払うことで保険が適用されます。出発前に、空港へのタクシー代やクルーズツアーの一部をエポスカードで決済しておけば条件をクリアできます。

※海外旅行保険が自動付帯。治療費用270万円まで補償。夫婦で持てば540万円に

ただし、エポスカードの保険には「利用期間90日まで」という制限があるため、100日間のクルーズでは最後の10日間が無保険になります。この10日間だけ短期の海外旅行保険に加入すれば、追加費用は数万円程度で済みます。トータルで考えれば、依然として大幅な節約になります。

まとめ:医療の不安を消すのは「事前の検診」と「手厚い保険」

世界一周クルーズの医療事情について、リスクと対策を詳しく解説してきました。最後に要点を整理します。

  • 船の医務室は「病院」ではない。歯科治療は一切できない
  • 出発前に必ず歯科検診を受け、虫歯や親知らずの問題を解決しておく
  • 持病の薬は「日数分+2週間」が鉄則。現地調達は不可能
  • 船上の医療費は自由診療で超高額。風邪でも10万円かかる
  • 年会費無料のエポスカードで、保険料0円・治療費540万円の補償が作れる

世界一周クルーズは、医療面での準備が最も重要です。どんなに豪華な客室を予約しても、医療トラブルで旅が台無しになっては意味がありません。

医療の不安を消すのは、「事前の検診(特に歯科)」と「手厚い保険」の2つです。この2つさえクリアすれば、船上はドクターがいる分、自宅より安心な場所になります。

出発の3ヶ月前には、以下のチェックリストを完了させましょう。

  • 歯科検診を受け、虫歯・親知らずの問題を解決
  • かかりつけ医に相談し、持病の薬を115日分処方してもらう
  • 英文の診断書・処方箋を医師に書いてもらう
  • エポスカードを夫婦それぞれ発行(年会費無料)
  • 持病がある場合、JTBなどの専門店で「医療サポートが手厚い船」を相談

特に、持病がある方や高齢の方は、JTBのようなクルーズ専門の旅行会社に、医療面での不安を正直に相談してください。「透析設備がある船」「日本語が話せる医師が乗船している船」など、条件に合った船を提案してもらえます。

準備さえしっかりすれば、100日間の世界一周クルーズは、医療面でも安心して楽しめます。後悔しない旅にするために、今すぐ準備を始めましょう。